インプラントのソケットプリザベーションとは?
インプラントは、失った歯を補うための治療法ですが、まだ歯が残っているケースにも適応されます。厳密には、保存が不可能な歯を抜歯したのちに、適切な時期を見計らって人工歯根を埋入するのです。その際、注意しなければならないのが「顎骨の吸収」であり、そのリスクを回避する方法に「ソケットプリザベーション」という処置法があります。今回はそんな抜歯を伴うインプラントケースにおけるソケットプリザベーションの有用性をわかりやすく解説します。
そもそもなぜ抜歯で骨が痩せる?
私たちの身体は、神経や心筋を構成する一部の細胞を除き、常に新しいものに作り変えられています。それは骨格を形成する骨も例外ではありません。骨は今現在の状況に応じて、形や密度を変化させているのです。
例えば、ボクサーの拳の骨はとても硬く、密度が高く、場合によっては隆起していることでしょう。これはボクシングの練習によって常に拳に対して強い衝撃が加わっているからです。それと同じように、私たちの顎は数十キロにも及ぶ咬合圧を常に受け止めているため、とても硬い状態を保たれています。抜歯をすると、その部分にかかる圧力がなくなり、徐々に痩せていってしまうのです。
抜歯窩の骨吸収を防ぐ方法
◎1年で2~4mmも骨が吸収する?
抜歯をした際に生じる穴を抜歯窩(ばっしか)といい、そのまま何もせずに放置すると顎の骨が徐々に痩せていきます。抜歯から1年も経過すれば、2~4mmの骨の高さが失われているといわれており、それはインプラント治療を行う上では致命的なデメリットとなります。そこで有用なのが「ソケットプリザベーション」です。
◎ソケットプリザベーションとは?
ソケットプリザベーションとは、歯を抜いた直後の抜歯窩に自家骨や人工骨、骨補填材などを填入する処置法です。抜歯窩がこれらの材料で満たされることで、骨の吸収を抑制できるだけなく、骨の増生まで期待できます。その結果、人工歯根であるフィクスチャーを理想的な上限で埋入できるのです。抜歯はしたければ、埋入オペまでしばらく期間が空く場合はもちろん、間もなく手術を実施するケースでもインプラント治療に良い影響がもたらされます。ソケットプリザベーションにかかる時間は10分程度です。
骨が痩せた状態でインプラントするとどうなる?
抜歯後、何も処置を加えず、骨が痩せた状態で埋入オペを実施すると、顎の骨とチタン製の人工歯根の結合が上手く進まなくなる可能性が高いです。専門的には「オッセオインテグレーション」と呼ばれる現象で、顎の骨の代謝が活発でなければ成立しません。あるいは、顎の骨の高さが2mmも3mmも減少したケースでは、そもそも10mm程度ある人工歯根を適切に埋め込むことさえ不可能となってしまうのです。
まとめ
このように、抜歯を伴うインプラント治療では、人工歯根を埋入するまでに顎の骨が痩せていく可能性があるため、ソケットプリザベーションのような前処置が必要となることもあります。当院では、そうした高度なインプラント治療にも対応しておりますので、関心のある方はお気軽にご相談ください。